ヨーロッパGP

 佐藤琢磨は、少年漫画の主人公のような人だと思う。
 ジャンルは違うが競艇マンガの「モンキーターン」で、主人公の波多野憲二がとあるレースで1着を獲りにいかずに2着を守るレースをした。無理せず着実にポイントを稼げばダービーに出走できるかもしれないという状況なので至極当然の行為。ところがベテラン選手に「つまらん奴だ」と言われてレーサーの本分を思い出し、2着ならダービーに出走できるレースで2番手でありながら敢えて1着を狙いに行くレースをした(結果は2着)
 たぶん琢磨の頭の中にはポジションを守ろうとかいう考え方はないのだろう。だから相手がフェラーリのMSやバリチェロだろうと接触覚悟で(実際に接触してるが・・・)レースをすることが出来るし、ホンダのF1参戦40年記念に表彰台を獲得して花を添えられればいいなと思うことはあってもそれが走りに影響を及ぼすことはないのだろう。普通、これほどまでにホンダの影響下にあれば、まず3位を確保することを優先しそうなものだが琢磨はそうしなかった。
 エンジンブローについて、地上波の解説だった脇坂さんがバリチェロとの接触のせいだと言っていた。飛んだ破片をエンジンが吸い込んだためああなったのだとのこと。結構自業自得な部分もあるのかもしれない。

 レース後の記者会見でも、良くも悪くも話題の中心は琢磨だった。地上波ではカットされていたが、バリチェロは速さは認めつつも琢磨のことを「アマチュア」と評している。
 もっとも琢磨に言わせれば、あそこで完全にバリチェロをパスできると思ったとのこと。琢磨がイメージしたようにバリチェロが動かなかったらしい。もしその通りだとしても、接触して結果をふいにしては何にもならない。相手がいてこそのレースなのだから・・・

1 1 ミハエル・シューマッハ フェラーリ B 1h32'35"101 2001.598 Km/h
2 2 バリチェロ フェラーリ B + 0'17"989 1995.137 Km/h
3 9 バトン BAR・ホンダ M + 0'22"533 1993.512 Km/h
4 7 トゥルーリ ルノー M + 0'53"673 1982.444 Km/h
5 8 アロンソ ルノー M + 1'00"987 1979.862 Km/h
6 11 フィジケラ ザウバーペトロナス B + 1'13"448 1975.479 Km/h
7 14 ウェバー ジャガーコスワース M + 1'16"206 1974.511 Km/h
8 3 モントーヤ ウィリアムズ・BMW M 1 lap  
9 12 マッサ ザウバーペトロナス B 1 lap  
10 18 ハイドフェルド ジョーダン・フォード B 1 lap  
11 17 パニス トヨタ M 1 lap  
12 15 クリエン ジャガーコスワース M 1 lap  
13 19 パンターノ ジョーダン・フォード B 2 lap  
14 20 ブルーニ ミナルディコスワース B 3 lap  
15 21 バウムガルトナー ミナルディコスワース B 3 lap  
16 10 佐藤琢磨 BAR・ホンダ M 13 lap  
17 5 クルサード マクラーレンメルセデス M 35 lap  
18 6 ライコネン マクラーレンメルセデス M 51 lap  
19 4 ラルフ・シューマッハ ウィリアムズ・BMW M 60 lap  
20 16 ダ・マッタ トヨタ M 60 lap  

 15台完走と前回モナコGPとは打って変わって安定した結果。でもレース内容はなかなか面白かった。
 相変わらずトゥルーリが好スタート。ただ1コーナーがヘアピンなので後続のマシンが次々と突っ込み混乱状態になった。パニスモントーヤ→ラルフと接触、ラルフはダ・マッタを巻き込んでリタイア。
 トゥルーリは琢磨にインから強引に抜かれ(解説の脇坂さん曰く「かなりムッとしたと思う」)その後いくつかのコーナーでやり返そうとしたら接触してマシンにダメージを負ってしまったらしい。
 1コーナーの混乱を経てポジションを上げたのはライコネンアロンソライコネンは昨年までJVの代名詞であった渋滞を引き起こしてしまう。腕は鈍っていないがマシンはどうにもならないようだ。結局MSにリードを築かせた後マシンが壊れる。クルサードのマシンもリタイアし、メルセデスは母国でわざわざブランドイメージを低下させただけの結果に終わる。
 マクラーレンと共に上位チームの中で目立たなかったのがウィリアムズ。なにせジャガーの2台とモントーヤがバトルしてたので(ジャガーを褒めるべきかもしれないが)マクラーレンほど深刻ではないにしても、このままではルノーとBARの後塵を拝することになりそう。ドライバー二人が離脱する?のもモチベーションの低下に繋がりそう。余談だがスタート後のRSのリタイアを見て、ウィリアムズは彼を引止めないのでは?と思ってしまった。すべてがRSの責任ではないにしても、昨年までのJVにあまりにも似ているから(コストパフォーマンスが悪いという意味で)
 最近のフェラーリはMS3ストップ、バリチェロ2ストップと作戦を分けることで確実にポイントを獲りにきている。今回は見事にはまり1−2フィニッシュとなった。そのフェラーリの2台でさえ気にしていたのが琢磨。バリチェロはまったく予想していなかったところで琢磨にインに入られ接触してしまう。琢磨はその後リタイアしたが、バリチェロもマシンにダメージを負ってコントロールし辛くなったとのこと。バリチェロは記者会見で琢磨を「アマチュア」と非難してはいたが、バリチェロ自身が「プロ」であるなら琢磨が近づいてきた時点でそれなりに警戒して、アクシデントの原因となるような事態は避けるべきだろう。
 それにしてもバリチェロフェラーリ移籍当初はチームオーダーに走りで抗議するなど結構とんがってたのに、長期契約を結んだ今では完全にナンバー2に甘んじている。チームメイトならまだしも、他のチームのドライバー相手にもこれではレースをしていないと批判されても仕方ないかもしれない・・・
 モナコでのMS-JPM接触もそうだが、フェラーリの二人はミラーを見ることがあまりないのではないだろうか。いずれにせよ、彼らの「危険なドライバーリスト」に琢磨が加わったのは間違いなさそうだ。


 地上波に対しては既に去年から諦めていたので愚痴を言うのは止めようと思っていたが、今回は解説の脇坂寿一選手がよかっただけにアナウンサーのひどさが目立った。視聴者にわかりやすい放送を目指しているのかもしれないが、「アウトラップとは?」と2回も脇坂さんに聞く必要はない。あれが演出であれば余計なお世話で視聴者を馬鹿にしすぎ。素なら勉強不足も著しい。