まるで「シュート」の掛川サッカー部

 「クリエーティブで見て楽しいサッカー」を掲げる野洲がついに頂点に立った。前回王者の鹿児島実に代表される守備的な「負けないサッカー」を破り、高校サッカー界に新風が吹いた。野洲はヒールパスや華麗なドリブルなど卓越した個人の技術力に目が集まるが、実はそれらに加え、練習で積み重ねた抜群のチームワークも強さを支えている。
 「相手に囲まれたら『やばい』ではなく、目立つ好機と思え」。野洲の練習ではこれをモットーに、ミニゲームを重ねて技術と駆け引きに磨きをかけ、互いに工夫し合って個性を伸ばす。決勝で3人に囲まれながら、軽々とドリブル突破を見せたMF楠神は「練習が苦しいと思ったことはない。キャッキャ言いながらミニゲームをするのが一番楽しい」と話す。全体練習は毎日2時間半程度だが、その後にそれぞれが納得いくまで自主練習し、午後10時にまで及ぶこともある。徹底的にゲーム練習を繰り返すことで、自然に連係プレーも向上した。
 だが、高い技術を誇りながら今季は県の新人戦、インターハイ予選とも勝ちきれなかった。技術に強さが伴い始めた転機は、野洲の選手たちが11人、県代表メンバーに入って3位になった国体だった。MF平原は「チームメートだった草津東の選手たちから、劣勢でも仲間に声を掛け続けて逆転に持ちこむあきらめない姿勢を学んだ」と振り返る。この経験から技術を超えた粘り強さを養ったことが、今大会の接戦を勝ち抜き、最後に鹿児島実の猛攻も乗り切ることができた。
 守山、守山北を率いて計2度、ベスト4入りの経験がある滋賀県サッカー協会の松田保技術委員長は「子どもたちが見てあこがれるようなサッカーで頂点に立った。ユース年代の変革の契機になる」とたたえ、野洲の優勝が今後の高校サッカー界に与える影響を注目していた。

 楽しい上に強いってのは理想的。