日本ならありえない

オーストリアのケーブルカー火災、被告全員無罪が確定

 【リンツオーストリア北部)=石黒穣】オーストリア中西部カプルンで2000年11月に起きたケーブルカー火災事故裁判の控訴審判決が27日、リンツ高裁であった。

 シュッツ裁判長は「控訴を支える理由はない」として控訴を棄却し、業務上過失致死罪などに問われた被告8人全員の無罪を言い渡した。8人を含む被告16人全員を無罪とした1審判決を支持した判断だ。同国の通常の刑事裁判は2審制で、これが確定判決となる。

 検察側は、出火原因となった暖房機メーカー捜索などを通じた新たな証拠を提出したが、シュッツ裁判長は「1審の判決を覆すには不十分だ」と指摘した。

 事故で死亡した慶応大4年、光本沙織さん(当時22歳)の父親で、日本人遺族会の光本雅俊会長(55)は、裁判を傍聴し、「信じられない。娘に何のいい報告もできない」と肩を落とした。

 事故は、スキー場に向かうトンネル内でケーブルカーが炎上し、福島県猪苗代町の中学生ら日本人10人を含むスキー客ら155人が死亡する大惨事となった。1審のザルツブルク地裁は、出火原因を車両後部の暖房機と断定したが、「事故は予見不可能だった」として、業務上過失致死罪などに問われた16人全員を無罪とした。オーストリアではこの種の事故で企業の責任を問う法律が存在せず、個人の責任が問われたが、個人に罪を着せるのは行き過ぎとの判断だった。検察側は04年9月、「国際基準に基づく安全対策が取られなかった過失責任は免れない」として、ケーブルカー運行会社幹部や交通省責任者ら8人について控訴した。
(読売新聞) - 9月27日23時39分更新